相続税の負担を軽減!特例と税額控除を徹底解説

「相続税」は、人生で一度経験するかどうかという重大なイベントにも関わらず、その仕組みは複雑で、多くの方が不安を抱えています。「一体いくらの税金がかかるのか」「節税対策はあるのか」など、疑問点は尽きないでしょう。
この記事では、相続税の基礎知識から、負担を軽減する強力な味方である「特例」と「税額控除」について、詳しく解説します。遺産を賢く相続するためのノウハウを、ぜひご一読ください。
相続税の振り返り
相続税とは?
相続税とは、被相続人の財産を引き継いだ相続人が、その取得した財産に対して支払う税金のことです。
相続税は、相続開始時に相続人が取得した財産の価額を基準として計算されます。
具体的な計算の流れは下記をご参照ください。

相続税の負担を軽減する「特例」とは?
相続税の特例とは、特定の条件を満たした場合に、相続税の課税対象となる財産の評価額を減らしたり、税率を軽減したりできる制度です。
1. 小規模宅地等の特例
被相続人の自宅や事業用地などを相続する場合に適用される特例です。一定の要件を満たせば、土地の評価額を最大80%減額できます。
減額割合と面積の詳細
用途 | 減額割合 | 限度面積 | 主な条件 |
---|---|---|---|
住居用宅地(特定居住用宅地等) | 80% | 330㎡(約100坪) | 相続人が居住している・配偶者が居住している場合 |
事業用宅地(特定事業用宅地等) | 80% | 400㎡(約120坪) | 被相続人が事業を行っていた・相続人が事業を引き継ぐ場合 |
貸付事業用宅地 | 50% | 200㎡(約60坪) | 被相続人が貸付事業を行っていた場合 |
2. 相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例
相続財産を国や地方公共団体、公益法人や特定の非営利法人に寄付した場合、その寄付財産については相続税が非課税となります。
【適用条件例】
- 寄付先が行政、公益法人や特定の非営利法人であること
- 寄付する財産が相続財産であること
- 所定の申告手続きを踏んでいること
3. 農地の納税猶予の特例
農業を営むために必要な農地などを相続した場合に適用される特例です。一定の要件を満たせば、相続税の納税を猶予することができます。
またこの猶予された相続税についても、引き継いだ相続人が死亡したり、更に次の後継者に農地を引き継いだ場合には免除されます。
【適用条件例】
- 農業委員会の証明書含めた必要書類を申告期限内に対応する
- 相続人が農業を営むことを継続すること
4. 特定計画山林の特例
森林経営計画を策定した山林などを相続した場合に適用される特例です。一定の要件を満たせば、相続税の課税価格を減額することができます。
【適用条件例】
- 相続する山林が特定計画山林であること
- 相続人が森林経営計画を継続すること
- 申告日においても山林を所有し続けていること
相続税額を直接減額!「税額控除」とは?
税額控除とは、計算された相続税額から、一定の金額を直接差し引くことができる制度です。
1. 配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が相続する場合、法定相続分または1億6,000万円のいずれか高い金額まで相続税が軽減されます。
【適用条件】
- 被相続人の配偶者であること
- 相続放棄をしていないこと
- 期限までに申告書を提出すること(この制度により相続税が0円であっても)
2. 未成年者控除
相続人が18歳未満の未成年者の場合、年齢に応じて相続税額から一定額が控除されます。
【控除額】
( 18歳 – 相続時年齢 ) × 10万円 = 控除額
3. 贈与税額控除
被相続人から生前に贈与を受けていた場合、3年以内のものについては、相続財産に持戻しの対象となります。
その時に支払った贈与税額を相続税額から控除できます。
【適用条件】
- 贈与税の申告をしていること
- 贈与を受けた日から相続開始日まで3年以内であること
4. 障害者控除
相続人が85歳未満で障害を持つ場合、障害の程度に応じて相続税額から一定額が控除されます。
【控除額】
- 一般障害者: 85歳になるまでの年数 × 10万円 = 控除額
- 特別障害者: 85歳になるまでの年数 × 20万円 = 控除額
補足
・控除額が実際の相続税額より大きい場合、この控除を受ける相続人を扶養している相続人の税額から、残りを控除可能です。
・特別障害者とは、一般障害者より重い障害を持っている方のことです。障害者手帳でいえば、1・2級の方が対象です。
5. 相次相続控除
相続開始後一定期間内に、さらに相続が発生した場合に適用される控除です。前回支払った相続税額の一部を、今回の相続税額から控除できます。
【適用条件】
- 前回の相続から10年以内に、再び相続が発生すること
- 前回の相続で被相続人が財産を取得し、相続税を納付していること
- この控除の適用を受ける者が、被相続人の相続人であること
6. 外国税額控除
海外に資産があり、外国で相続税に相当する税金を納付した場合、一定の要件を満たせば、その外国税額を日本の相続税額から控除できます。
【適用条件】
- 国外財産を取得し、その国外財産に対してその当該国の法令により相続税に相当する税を納めていること
- その財産が、相続または遺贈により取得されたこと
まとめ:特例と税額控除を理解し、適切な相続税対策を!
相続税は、複雑な計算式や様々な特例、控除などが存在するため、事前にしっかりと理解しておくことが重要です。専門家である税理士に相談しながら、ご自身の状況に最適な相続対策を進めていきましょう。