遺言書を確実に保管するための「自筆証書遺言書保管制度」活用法

自筆証書遺言書を大切に保管することは、遺言を確実に執行するための重要な要素です。「自筆証書遺言書保管制度」は、そのための最善の方法と言えます。この制度を正しく活用することで、遺言書の紛失や改ざんのリスクを避けることができます。
この記事では、「自筆証書遺言書保管制度」の詳細な活用法について解説します。
自筆証書遺言書保管制度とは
制度の概要
自筆証書遺言書保管制度は、法務局が自筆証書遺言書を安全に保管し、遺言書の紛失や改ざんを防ぐ制度です。
遺言者が生前に作成した遺言書を法務局に預け、原本とスキャンされた画像データをしっかりと保管してくれます。
制度の目的
この制度の主な目的は、遺言者の大切な遺言書の安全性を高めることです。
適切に保管してくれるという点と、遺言書の改ざんを防ぐという2点で非常に有用な制度です。
自筆証書遺言書の基本
書き方と要件
自筆証書遺言書は、遺言者が自らの手で書く必要があります。日付と署名を明記し、財産を誰に分配するかを正確に分かりやすく記載します。

注意すべきポイント
- 形式に不備があると遺言自体が無効になる可能性があるため、法的な要件を満たすことが重要
- 家庭裁判所による検認の手続きが必要なため、相続人へ手間や時間の負担をかけてしまう
- 自宅保管の場合、紛失や改ざんのリスクがある
保管制度活用のメリット
安全性の確保
法務局が遺言書を保管するため、紛失や改ざんのリスクがなくなります。
法的な要件のチェック
作成した自筆証書遺言を預ける際に、保管官により、自筆証書遺言の要件に沿ったものであるかが確認されます。
検認不要
本制度を利用して保管していた場合、家庭裁判所による検認手続きは不要となり、相続人への負担が少なくてすみます
遺言者の死亡時に通知がくる
希望している場合のみですが、遺言者の死亡後、相続人に対して、遺言書が保管されていることが通知されます。
遺言書があることを知らなかった、見つからなかった等の自体が回避されます。
保管制度の具体的な利用方法
預ける対象の自筆証書遺言を作成します。法的な記載の要件は、預ける際にチェックされますが、作り直す手間もかかりますので注意して作成します。
対象の保管所は決められており、住所地・本籍地・持っている不動産の住所地いずれかの管轄の保管所になります。
また預けに行く際は、事前予約が必須です。忘れずに予約をしましょう。
下記の必要物品を忘れずに持参する。足りない場合、当日に対応できません。
- 作成した遺言書
- 顔写真付きの本人確認書類
- 住民票
- 保管申請書
- 手数料 3900円
問題なく預けることができると、保管番号が記載された保管証を受け取ります。
保管番号は、あとで閲覧や撤回、変更届を出す際等に手続きがスムーズに行うことができます。
保管証については、再発行はなされないため丁寧に保管しましょう。
なお、保管証自体は紛失してしまっても、その後の手続き自体は可能です。
制度に関するよくある質問
- 遺言書の内容を変更したり、遺言書自体を撤回することはできるのか?
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はい、どちらの場合も可能です。預けていた遺言書を一度撤回した上で、変更した遺言書や新しい遺言書をその後あらためて保管申請を行うことで対応可能です。
- 保管後の遺言書はどう確認する?
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遺言者の死亡後に相続人が法務局で遺言書の内容を確認することができます。
- この制度を利用したいが、遺言者本人が体調が悪い。代理人で預けられるのか?
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制度の利用は本人のみ可能です。この場合は、自宅又は第三者が保管するか、公正証書遺言を活用して、公証人に自宅に来てもらうことが考えられます。
- 預けた遺言書はどのぐらいの期間保管されるの?
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預けられた遺言書は、原本は遺言者の死後50年間、スキャンされた画像データは150年間保管されます。
長期間にわたり安全に保管されるため安心です。 - 預けた際にもらった保管証を失くしてしまったが、再発行はできますか?
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再発行はなされません。ですが、申請者であることが確認できれば、撤回や変更等の手続き自体は行うことができます。
不明点がある場合
相談窓口
法務局や専門家で相談することができます。
専門家の助言
対応が難しい場合、専門家に相談することで、遺言書の原案の作成含めてスムーズな進行が期待できます。
まとめ
「自筆証書遺言書保管制度」を活用することで、大切な遺言書を安全に保管することが可能です。これにより、遺言者の意思を確実に反映し、大切な方の相続トラブルを防ぐことができます。この記事で紹介した手順や注意点を参考に、安全かつ確実に遺言書を保管してください。専門家の助言を受けながら、安心して遺言書保管を進めましょう。