失敗しない遺産の残し方!「死因贈与」と「遺贈」基礎知識と使い分け術

遺産を残す方法にはさまざまな選択肢がありますが、その中には「死因贈与」と「遺贈」という手法があります。しかし、それぞれには特長や注意点があり、適切な選択をするためにはしっかりと理解しておく必要があります。本記事では「死因贈与」と「遺贈」の違いやメリット・デメリットを詳しく解説し、よりよい遺産の残し方について考えていきます。

目次

死因贈与と遺贈の基本概念

死因贈与とは?

死因贈与とは、贈与者が自分の死亡を条件にして、特定の財産を他者に譲渡する契約です。
贈与者の生前に契約を結び、死亡時にその効力が発生します。

遺贈とは?

遺贈とは、遺言に基づいて特定の財産を他者に譲渡する手法です。遺言者の死亡後、遺言の内容に従い、財産を譲渡します。

死因贈与と遺贈の違い

項目死因贈与遺贈
効力の発生時期贈与者の死亡時遺言者の死亡時
書面死因贈与契約書があることが望ましい遺言書が必要
取り消しの容易さ取り消し可能(一部例外あり)遺言書の内容は遺言者が生前に変更可能
承継手続き贈与契約に基づいて直ちに所有権移転可能遺言執行者が所有権移転を行う
相続争い比較的少ない遺言の内容に異議がある場合、争いが生じる
課される税金相続税が適用相続税が適用
費用契約書作成費用が必要遺言書作成費用や遺言執行費用が必要

死因贈与のメリット

柔軟な財産分配

死因贈与では贈与者の意思を生前に具体的に反映できるため、柔軟な財産分配が可能です。

相続争いを避ける

契約に基づくため、遺産分割争いを避けることができます。
また遺言書が無効となっても影響がありません。

手続きの迅速さ

贈与契約書が作成済みであれば、贈与者の死亡後すぐに所有権を移転できます。
遺贈のように、家庭裁判所による検認などの対応は必要ありません。

死因贈与で渡すのが不動産であれば仮登記できる

生前に死因贈与契約を結び、贈与者と受贈者で合意をしているのがかたちとしてあるため、生前のうちから不動産の仮登記をすることが可能です。

死因贈与のデメリット

負担付の場合の取り消し

負担(なにかをしてもらう義務)を相手に課していた場合で、相手がその義務を履行している場合は取り消しをすることは原則できません。

負担を課さない単なる贈与の契約であれば、取り消しは可能です。ただし、相手方に取り消しをする旨を通知する等の対応はしっかりされることをおすすめします。

遺留分との兼ね合い

死因贈与契約による受け取る財産については、遺留分侵害額請求の対象となります。
相続人の相続分が極端にすくない場合等は、遺留分を請求される可能があります。

ただし、遺留分侵害額請求の対象となる順番は民法で定められており、①遺贈、②死因贈与、③生前贈与の順で請求されます。

受贈者が先に亡くなっていた場合

死因贈与契約が実際に履行されるのは贈与者の死亡時となりますが、その前に受贈者が亡くなっていた場合、契約が履行されることはありません。

遺贈のメリット

簡単な取り消し・変更

遺言書の内容は遺言者が生前に自由に変更で、死因贈与契約のように相手方との契約ではないため、状況に応じて柔軟に対応できます。

法定相続人への配慮

遺言者の意思を反映しつつも、法定相続人への配慮がしやすくなります。

相手の同意が不要であること

遺贈は契約ではないため、相手方の同意が不要です。
そのため相手への事前確認などはせずとも遺言書へ遺贈する記載をしておくだけで実行が可能です。

内容を秘密にできること

遺贈の場合自分で遺言書を作成することができるため、内容を相手方に秘密にすることが可能です。
相手に財産を渡すことを事前に知らせたくない場合に活用が可能です。

遺贈のデメリット

相続争いの可能性

遺言の内容に異議を唱える法定相続人がいる場合、相続争いが生じる可能性があります。

執行に手間がかかる

遺言書の作成や保管、実際に執行する前に家庭裁判所による検認など、時間と手間がかかることがあります。

相続放棄の可能性

相手方に財産を渡したく遺言書へ遺贈の旨を記載しても、相手方が相続放棄をした場合、受け取ってもらうことができず想いが叶わないことがあります。

適切な方法を選ぶためのポイント

家族構成を考慮する

家族構成や関係性を考慮に入れ、それぞれの方法が最適かどうかを検討しましょう。

法的アドバイスを受ける

専門家のアドバイスを受けることで、正確な情報と選択肢を得ることができます。

財産の種類と価値を考慮する

譲渡する財産の種類や価値に応じて、税金や手続きの面で最適な方法を選ぶことが重要です。

死因贈与に適したケース

早急な財産分配が必要な場合

贈与者の遺志を早急に実現させたい場合、検認などの時間のかかる工程が不要なため、死因贈与が適しています。

相手に頼み事がある場合

負担付死因贈与契約を結び、ペットの世話や配偶者の扶養を頼むかわりに贈与することが可能です。
遺贈でも同じないようは実現可能ですが、遺贈の場合相続放棄ができるため、実行されない可能性があります。

遺贈に適したケース

柔軟な変更が必要な場合

遺言者の意思や状況が変わりやすい場合、遺言書の変更が容易な遺贈が適しています。

内容を知らせたくない場合

相手に財産状況やどう与えるか等知らせたくない場合は、契約や相手方の同意が不要な遺贈が適しています。

まとめ

「死因贈与」と「遺贈」のどちらを選ぶかは、個々の状況やニーズによりますが、それぞれの手法には特長と注意点があります。専門家のアドバイスを受けながら、最適な方法を選び、失敗しない遺産の残し方を実現しましょう。あなたの大切な人たちのために、適切な遺産分配を考えることが重要です。

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