遺言書を無効にしない!自筆証書遺言の要件とよくある落とし穴
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、遺言者が自ら全文を手書きし、その遺言書に日付や署名、押印をすることで成立する遺言の形式です。この自筆証書遺言は、公証人が介在しないため、正確に法定された要件を守ることが不可欠です。法定要件を満たさないと、せっかく作成した遺言書が無効となってしまう危険性があります。
自筆証書遺言の法定要件
それでは、自筆証書遺言を作成する際の注意すべき要件を詳しく説明いたします。
要件を満たすためには、まず全文を手書きで書くことが必要です。パソコンやタイプライターで作成したものは認められません。
また、正確な日付を手書きで書くことも大切で、年月日をはっきりと記載しましょう。日付印や吉日等の曖昧な表現は無効とされます。
さらに、氏名も手書きで書く必要があります。ペンネームや雅号でもかまいませんが、遺言執行をスムーズに進めるためには戸籍上の正式な氏名を記載することが望ましいです。旧漢字が含まれる場合も戸籍通りに記載するよう留意しましょう。
以上のように、自筆証書遺言を正しく作成するためには、手書きで全文を記入し、正確な日付と氏名を書くことが欠かせません。これらの要件を守ることで、遺言の有効性を確保することができます。
ただし財産目録については、パソコンでの作成が認められておりますので、下記記事をご参照ください。
信憑性向上のための印の押し方
遺言書に押される印はとくに指定されておらず、認印でも作成自体は可能です。ただこういった重要な文書の信憑性を高めるためには、実印や金融機関届出印を使用することが勧められています。一方、契印は法的に必要とされていないため、契印がなくても問題ありません。しかしながら、複数枚の遺言書が一通の完全な文書として認識されない可能性があるため、複数枚の遺言書がある場合は、ホチキスで留めてつなぎ目に遺言書に押印したものと同じ印で契印することが推奨されています。
よくある落とし穴
自筆証書遺言を作成する際に陥りがちな落とし穴とその回避方法を紹介します。
手を添えて補助する
自筆証書遺言を作成する際には、全文が自筆であることが重要です。他人が手伝って記載した場合、その遺言は原則として無効と見なされます。ただし、裁判所の判例によると、遺言者が自ら記述する能力がある場合や、他人の手が遺言者を単に支援するに過ぎない場合には有効と認められることがあります。ただし、このような補助を行うことは難しく、その補助が有効であったことを証明するのは非常に困難です。
身体的な理由や症状により、自筆証書遺言を書くことが難しい場合には、公正証書遺言を作成することがおすすめです。
曖昧な表現
遺言書の文言が曖昧では、相続人間で争いの原因になってしまいます。例えば、”まかせる”という表現は複数の意味を持つため、具体的で明確な表現を心掛けましょう。
例として、「私の自宅は、すべて子供にまかせる」と記載した場合、
自宅とはどの不動産をさすのか、子供とは誰のことをさすのか、まかせるとは与えるという意味なのか手続きを任せるという意味なのか、複数の解釈ができてしまいます。
記載誤り
手書きの遺言書には、誤記や書き損じが起こり得ます。そのため、修正する際には民法で定められた要件を厳守する必要があります。要件に適合しない訂正は無効となる可能性があるため、慎重に対処することが重要です。書き損じがある場合は、新たに書き直すことをお勧めします。
遺言書が複数でてきた
複数の遺言書が存在すると、本人の意思をどの遺言書が正確に表しているかが問題となります。このような状況を避けるためには、新しい遺言書を作成する際には古いものを破棄することが望ましいです。
遺言書の適切な保管方法
遺言書をしっかり記しても、その保管方法が適切でなければ見つからずに困ることがあります。亡くなった後、すぐに遺言書を見つけるためには、適切な場所にきちんと保管することが必要です。
普段使わない自宅の金庫や、重要な書類をしまっているところに保管したり、信頼できる専門家や身近な方に預けておく方法もあります。ただし、貸金庫に保管するのは避けた方が良いでしょう。相続人が遺言書が貸金庫にあることを知っていても、遺言書を確認するためには戸籍謄本など他の書類も必要となり、手続きが煩雑になってしまいます。
まとめ
遺言書を有効に記すためには、正しい形式で書き、内容を明確にすること、そして適切な保管方法を選ぶことが重要です。この情報を参考に、大切なメッセージをしっかり伝えられる遺言書を作成してみてください。